会話形式悩み相談ロング

FとMのダイアローグ②

尊重する気持ちをもつこと

M
尊重する気持ちをもつことの大切さをテーマに対話したいと思います。まず、Fさんの考えを自由に述べてください。

F
ありのままを認め、大切にすることです。対話であれば共感的に話を聴いていく、肯定的に一度内容を受け止める。自分の経験や価値観の枠組みで判断しない。なかなかむずかしくてできていませんが、相手を尊重するために意識しています。

M
尊重するって、具体的には何かなと考えてしまいました?改めて考えたけど答えがないのでAIに聞いてみました。以下は自分が納得した抜粋です

「尊重する」とは、具体的に言うと、相手を認め、その人の価値や存在を大切に思い、敬意を持って接することです。

もう少し掘り下げて、具体的な行動で見てみましょう。

  1. 相手の話を「聞く」
  2. 相手の「違い」を認める
  3. 相手の「プライベート」や「境界線」を守る
  4. 相手の「選択」を尊重する
    つまり、尊重するとは、単に「敬語を使う」といった表面的なことだけでなく、相手を一人の独立した人間として認め、その存在や考えを大切にする心のあり方が行動に現れることです。

M
この説明を含めて、尊重の姿勢を持って他者理解することかなと感じましたが
では、敬意を持って接して他者を理解するために、どのような質問をしますか?また、敬意を示す点で気をつけていることはありますか?

F
まずは礼儀正しく挨拶をして、初対面ならきちんと自分の名前を先に名乗る。
落ち着いてゆったりできる静かな場所を選び、終わりの時間を一緒に確認しておく。

その上で、

  1. 相手の話を「聞く」
    →話を遮ったり否定することは控えて理解する姿勢で聴く。
  2. 相手の「違い」を認める
    →自分の考えとちがっていても、相手の気持ちや意見をいったんは受け取る。ちがうことそのものに対して否定を生み出さない。理解したいという気持ちをもってみる。
  3. 相手の「プライベート」や「境界線」を守る
    →社会的・相手の状況としてセンシティブな話題や質問を自分からは持ち出さない。プライベートな話題は相手の方からでた部分について取り上げる。
  4. 相手の「選択」を尊重する
    →相手が自分で決めたという気持ちを認めて大切にする。

また、言葉以上に尊重を示すために大切にしているのはノンバーバルの行動です。
視線の使い方、お互いの体の距離感(※1)、動作など。
それぞれに心地よさの感じ方にはちがいがある、そのことへの意識が相手を尊重するためには大切かなと思っています。
また、実際のやりとりは自分の存在による影響を取り除くことはできませんし、お互いの様子をみながら、近づいたり離れたりが繰り返されていますよね(※2)。
その意味で自分自身の心地よさを知っていることがまず大切で、無理をして相手に合わせる必要はありません。
そもそも、自分の心地よさと相手との境界(※3)がちゃんとあれば、周りにもよい影響があり、自然に他者を尊重する姿勢がもてるためです。

そして動作については、丁寧さを心がけています。
自分が座る前に“こちらにどうぞ”と座っていただいてから自分が少し間をおいて後から座る。席の座る場所や出入りの所作で相手に敬意を示す。
そう思うとこれらは、日本の敬意の文化や作法に通じるものもあるような気がしますね。
私自身も身についていないのですが、改めて勉強してみると役立つことも多いように感じました。

M
日本文化としての所作については、お茶や生花の先生の動作を見た時に心地よくなるので所作が相手に与える印象は重要だと感じます。所作が相手の敬意につながっていますね。
ノンバーバルの行動について、視線や距離感について教えていただきましたが、表情や声のトーンやジェスチャーなどと尊重の関係性についてはどのように考えていますか?
自分ができているかどうかだけでなく、こんな自分を目指しているという内容で教えていただきたいです。
メラビアンの法則によると、人がコミュニケーションにおいて影響を受ける情報の割合
視覚情報(ノンバーバル):55% (表情、視線、態度など)
聴覚情報(ノンバーバル):38% (声のトーン、話すスピードなど)
言語情報(バーバル):7% (話の内容、言葉の意味)
と言われているので、余計に気になりました。

F
初めて知りました、面白いですね。
表情は個人差が大きいなという印象で個人的には自然体でよいという考えです。
ただ、無理に笑顔を浮かべる必要はないと思いますが、険しい顔だとやはり警戒されてしまいますよね。
日本人は欧米に比べて声色を重視して気持ちを読み取るそうです。
業界の重鎮の先生方は、語りかけるような聴いているだけで心が落ち着くような音が流れています。
相手の心に耳を澄ませ理解しようと努めるとき、すぐに言語化できませんよね。
こちらが言葉を発するときも身体の内側を通って声がのっていくのではないでしょうか。
具体的な形にすると、ゆっくりと落ち着いて話すということになるように思います。
あとは沈黙も意味を味わい、間も大切にします。この辺りも文化差、個人差がありますね。
ジェスチャーについて私はかなり癖があり、言葉だけで伝えることがとても苦手です。
児童の臨床などそれが役立つこともあるのですが、逆もありますので、相手の立場やシチュエーションによって明確に使い分けていけるようになることを目指しています。

M
尊重する気持ちをもつことの大切さについてダイアローグしました。
相手に尊重を持つと、言葉だけでなくノンバーバルにも現れるという点に興味深く関心を持ちました。確かに大切にしたい人を前にすると背筋が伸び、所作にも気を遣っています。その姿勢は相手に伝わるので表面でなく意識から尊重する、そんな自分でありたいと感じました。ありがとうございました。

〈参考になる概念〉


※1 パーソナルスペース
人間は4つの距離を対人関係で使い分けているといわれます(Hall;1966)。
・家族や恋人など親しい人(45㎝以内)
・友人・同僚(45~120cm)
・上司部下・接客(120~360cm)
・公衆距離(360cm以上)
育ってきた文化や心の状態によっても変動することが指摘されています。パーソナルスペースは、男女の性別による違いや加齢による変化、人数による変化、近年ではVR空間上なども研究対象になっています。

※2 関与しながらの観察(Sullivan,H.S.)
対人関係や場を重視する心理療法では、治療者は自分が与える影響を除くことができないという前提があります。相手の言葉や行動だけではなく、治療者側の心の動きや関わり、そのときの状況、環境など、すべてが観察の対象となります。文化人類学の調査法の一つである参与観察から着想を得たといわれます。

※3 バウンダリー
自分と相手の境界を指す、臨床心理学では古くから用いられている概念です。文章ではからだの距離感のお話ですが、“わたしはわたし”、“あなたはあなた”といった心の境界も含まれている言葉です。