会話形式悩み相談ショート

世代別コミュニケーションのポイント④

60代同僚Bさんとの会話

A:「Bさん、先日の電話の伝言メモ、とても丁寧に書いてくださって助かりました。」
B:「ああ、あれね。なんだか電話口で繊細な感じの方だったから、丁寧に伝えたほうがいいかなと思ってね。」
A:「そうなんですよ。ちょっと気を遣う先方でして…。
Bさんって電話対応が上手ですよね。相手によって話し方を変えている感じがします。何かコツがあるんですか?」
B:「長く生きてると、いろんなタイプの人に会ってきてるからさ。話してると“この人、あの時のあの人の話し方に似てるな”って思うことがあるんだよ。そのイメージで話すようにしてるかな。」
A:「なるほど。さすがですね。
それに、Bさんのメモって内容が端的でわかりやすいし、字もすごく丁寧ですよね。」
B:「最近の若い人のメモは、聞いたことをそのまま書いてるから、あとで読み返すと意味がわからないことが多いんだよね。
ちょっとしたコツがあるんだよ。字もね、若い頃“お前の字は読めない!”って上司に怒られたから、仕方なく練習したんだ(笑)。」
A:「なるほど、コツがあるんですね。伝言内容はどうやってまとめているんですか?」
B:「電話で内容を聞いたあと、最後に“つまりこういうことでよろしいですか?”って先方に確認するんだよ。
そうすると、メモも整理しやすいし、もし自分の理解が足りなければ、相手が自然に補足してくれる。
それに相手も“ちゃんと伝わった”って安心するから、一石二鳥なんだよ。」
A:「なるほど〜。複数の効果があるんですね。次から私も真似してみます。
そういえば、先日お孫さんと旅行に行かれたって言ってましたよね?」
B:「ああ、行ってきたよ。ほら、写真撮ったんだ。見てみて、可愛いだろ?」
A:「本当だ、可愛いですね〜。ジイジ、もうメロメロなんじゃないですか?」
B:「ははは。責任がないって、いいもんだよ。
Aさんも、いつかこの気持ちがわかる日が来るよ。」

解説

60代との会話で大切にしたいこと

自営業の方にとっては当たり前かもしれませんが、最近では企業や官公庁でも、60歳以上の方の雇用が盛んに行われるようになってきました。
役職定年や定年延長、非常勤など、雇用形態もさまざまです。


私は組織において60代のキャリアはとても重要な存在だと感じています。
というのも、私自身どちらかといえば年上の方に可愛がってもらって生きてきたタイプで、多くのアドバイスをもらってきたから、その分バイアスがかかっているかもしれません。


年配、すなわち上司に好かれると、周囲からは媚びを売っていると言われることもありました。「媚びを売る」という言葉は、もともと“媚び”とは女性の眉を意味するそうです。


もちろん男女差別の意図はありませんが、眉を動かして相手の話を聞く姿勢、つまり相手に関心を向ける態度は、話す側にとって心地よく、自己開示につながるものです。私は媚びを売っていたわけではなく、ただ、純粋に相手に興味を持ち、自然と話を聞くことが多かっただけです。その他にも最近になってコミュニケーションに関する本を読むようになり、若い頃から自分が自然とやっていたことが“関係を深めるテクニック”の一つに気づきました。それが、「相手との共通点を探す」ということです。


皆さんも、会話の中で自分との共通点を探した経験があるのではないでしょうか。
出身地、好きな食べ物、好きな場所、学生時代の部活動など、どんな小さなことでも構いません。ひとつ共通点を見つけると、その話題から“共感の連鎖”が生まれ、会話が自然と深まっていきます。
これは心理的にも大きな効果があります。
私自身、若い頃から無意識にこの効果を活用していたようです。最近は自分より年下の方と話すことも増えましたが、この「共感スキル」が高い人は、やはり女性に多いと感じます。きっと誰かに教わったというより、経験や本能的な思いやりから出てくる言葉なのだと思います。そうした言葉には、人を惹きつける力があるものです。


私の経験上、年長者と会話するときに意識した方がいいと感じるのは、
  相手が男性の場合は「武勇伝」を語ってもらうこと
  相手が女性の場合は「苦労話」を語ってもらうこと
この2つです。


もちろん個人差はありますが、どちらの場合も、相手の表情が一気にいきいきしてきます。
そして、その話の中にはとても具体的な知恵や経験が詰まっています。
武勇伝には、挑戦や成功を通して得たスキルや考え方があり、
苦労話には、困難にどう対処したかという“生きる知恵”が込められています。
どちらも、聞く側にとって非常に学びの多い時間になります。
そして何より、そうした話を引き出すことで、相手との距離が自然に近づいていきます。
経験から生まれた言葉や知識は、誰の人生にも深い影響を与えるものです。
だからこそ、60代の方々との会話は、単なる“世代間交流”ではなく、“知恵の共有”の場でもあると思います。
相手に敬意と興味を持ち、共通点を見つけながら話を聞く
その積み重ねが、きっと世代を超えた信頼関係をつくる鍵になるでしょう。


身近に、年配の方が勤務されている場合は、よかったら参考にしてみてください。あなたにとって、生きるための必要な情報を得るチャンスです。
聴くことであなたの生活が豊かになりますように。