FとMのダイアローグ11
M
今回のテーマは、『整える』について対話していきます。私は環境第一なので整えると聞くと、すぐに部屋や玄関など環境面が思いつきますが、心を整えるとか明日の準備を整えるなど調和の意味もあるかと思います。Fさんにとって整えることとはどのようなイメージをお持ちですか。
F
整えると聞くと、Mさんの綺麗に整理整頓された机上が思い出されます。環境面を整えるプロフェッショナルだと思いますし、判断力やスピードとも関りがあるようなこともお話されていたと思うのですがどのような観点からなのでしょうか。
また、マネージメントする立場として、組織や業務の全体像を見渡して整えるとか、さまざまな世代・個性をもった大集団の人間関係を整えるとか、パッと掴んでやっていらっしゃいますよね。ご自身の型があるから受け止められるしうまく収められるんだな、という印象も受けてきていたんですが。その辺りは関連性などありますか。
M
私は集中型で一つのことに深く没頭したいタイプです。だから、ノイズを遮断し、環境をシンプルにすることでパフォーマンスを最大化したいと考えています。それによって決断疲れを防いでいるとも思っています。ただ、拡散型でカオスから着想を得るタイプ、具体的には机の上が雑然としている人もいます。彼らにとっては、視界に入るランダムな情報(本やメモの山)が脳内で化学反応を起こし、新しいアイデアを生む刺激になることもあるので、いろいろ試してみて自分にフィットするものを見つけるのが良いと思います。
自分自身をマネジメントする(机を整える) その延長線上で、他者や組織をマネジメントする(環境を整える)ことが繋がっていると思っています。ですので、大集団の中にいても「あ、あのメンバーの様子が少しおかしい」「チームの空気が少し淀んでいる」という微細な変化を直感的に察知(パッと掴む)できます。 これは超能力ではなく、普段のベース(環境)が整っているからこそ、ノイズ(異常値)が際立って見えると考えています。だからこそ普段の環境にはこだわっています。私は相談室の環境設定が細部にも気を使っていて、ライフスタイルの参考になったのですが、ちなみにFさんは家庭や職場など環境面で整えている場所はありますか。またその他に自分にとって整えるとはどのように捉えていらっしゃいますか。
F
心理職は枠組み(構造)を整えることを意識します。一つは、物理的な室内環境、時間・頻度や期間設定、など外側の枠組み。もう一つは、態度、目標や進め方、約束事など内面の枠組みです。
例えば引きこもりで昼夜逆転気味の方と心理面接をするとします。時間設定が朝だったり夕方だったりすると、それは朝だからしんどくて具合が悪いのかそれとも調子がよくないのかわからなくなります。Mさんのおっしゃる机上の環境が整っているからこそノイズが際立つということと同じ原理原則で、枠組みを整えておくことで変化に気づけるということがあります。
そして、内面の枠組みも整えます。例えばいつもは柔らかい雰囲気の方が、別の日には鋭い口調で仕切り始めたら戸惑いますよね。会社の人間関係のストレス対処を相談したいと来ているのに、家族の話になったり趣味の話になったりしたら困ります。なので『この場での約束事』をまず話し合い、同意を得てからはじめるんです。
内面の枠組みを整えることについて、Mさんは意識されていることはありますか?
M
内面は苦手分野ですから、理想とする自分自身の内面の枠組みを整えることについてお伝えしますね。マネージャーの頭の中やスケジュールに「余白」があると、部下は「今、相談しても大丈夫だ」「自分を受け入れてくれるスペースがある」と感じます。 多様な個性を持つ集団をまとめるためには、「自分の中に、相手を遊ばせるだけの余白」も作れると良いですね。ですから、職場内に私という存在が余白や余裕を感じさせるにはどうすれば良いかを考えています。現在の結論は、感情の波を起こさないようにすること、これが内面の枠組みになります。そして、現在できていないので環境を整えたり、身体的アプローチを試したりしています。感情の波を作らない身体的アプローチとしては、座りすぎない、食事のバランスに気をつける、運動するなどを実践していて、上手くいっていないのは瞑想です。Fさんの身体を整える方法はありますか?また、心理職としてではなく、個人の「整える」についても教えてください。
F
余白や余裕を大切にされているということは、ご一緒していても感じます。内面のことや感情の波を起こさないことも苦手というふうには見えませんが、ご自身として極められていそうですね。
個人的な生活では、先ほどお話したような細かいことは意識できていません(笑)心身を整えるということを一番大切にしています。自分なりのバランス感覚でなるべく中心軸に戻すという意識です。姿勢が悪くなったらまっすぐに戻す、体が重かったら動かす、食べ過ぎたら次の食事で減らす。冷えたら温める、疲れたら休む。シンプルなことばかりです。
環境を自分好みに整えることも好きなのですが、共同生活なので、ライフスタイルや発達年齢を考えて家づくりをしています。各自の自由スペースを指定してあり、そこは散らかっていても溢れるまでは関与しません。共有スペースは『寝るまでにはすべてを片づける』ルールです。床、ダイニングテーブル、ソファ、リビング。これは防災と掃除の観点から重要性を繰り返し伝えています。すごく綺麗に整理整頓された家でもないですが、朝起きて視界に入る場所は整っていると気持ちよく過ごせます。
M
ちょっと気になったので最後に一点だけ教えてください。Fさんの色のセンスが私はとても素敵だなと思っているのですが、住環境や衣服等に関する色を選択する基準はあるのでしょうか?色を整えるって私は苦手なのですぐに黒か白にするのですが、色は心理的な作用もあると聞いたことがあります。何か実践されていることがあれば教えていただきたいです。
F
ありがとうございます。面積の比率で決めています。どんな色にも合うベースカラー(白、黒、ベージュ、グレーなど)を7割程度、そこにメインカラーを1,2色選び、アクセントカラーを0.5くらい入れます。住環境も衣服も、このサイトのデザインも概ねこの比率で色を配置しています。メインカラーは季節やTPOに合わせ、アクセントカラーは気分に合わせることが多いです。
白も黒もどんな色にも合いますしモノトーンもスタイリッシュですよね。色を入れるとしてもどんな色も違和感がないですし、洗練された印象になります。ミドルエイジになると、若い時には派手すぎると感じていたような鮮やかな色合いも似合うようになります。
M
色は奥深いと感じていますが、考えることから逃げているので表現の幅を広げたいと思いました。ありがとうございます。
今回は整えることについて、ダイアローグしてみました。身の回りの整えるもあれば、心を整えるもあり身近に多様な整えるがあることを感じました。そもそも月や地球や宇宙が整っているのかもしれませんね。私たちができる整えるは小さなことかもしれませんが、その小さなことを大切にすることが宇宙に繋がり、幸福につながるような気持ちになりました。読者の皆様がそれぞれ整えることについて考えていただけると幸いです。
ダイアローグとは、単なる情報交換を超え、参加者同士が相手の意見や考えを深く理解し、共感を深めながら、新たな視点や行動の変化を生み出す「対話」を意味します。
組織では、相手と自分との間に「相互理解」と「共通の理解」を築くためのコミュニケーション手法として用いられ、信頼関係の構築や創造性の育成、組織力の向上に繋がります。
組織をマネジメントする立場にある人にとっては欠かせないスキルです。ただ、センスで乗り切っている人が多いと感じる印象もあるので、具体的な対話で学べるように表現してあります。
