会話形式悩み相談ショート

世代別コミュニケーションのポイント③

年下上司Aと年上部下Bの会話

B:「お願いされていた若手の人材育成の件なんですけれども、自分には難しすぎるので、役割を変えてほしいと考えています。」

A:「そうなんですね。どんなところが難しいと感じていますか?」

B:「自分自身にキャリアアップの気持ちがもうないので、その自分が部下を育成するという業務に納得ができないんです。」

A:「なるほど……。私は、Bさんの力をもっとチームに生かせると思って、この役割をお願いしたんです。特にBさんは、相手に気を配ることができて、人の気持ちをよく理解している。チームの状況もよく見て、適切にアドバイスできる方だと思っています。その点については、どう思われますか?」

B:「そう言っていただけるのは大変ありがたいのですが、私は自分の仕事を確実に終わらせて、できるだけ時間内に帰りたいと考えるタイプです。
ですから、誰かのために自分の身を削って働くという気持ちは正直ありません。チームの状況を観察することは得意かもしれませんが、今の育成担当という役割は、自分には合っていないと感じています。」

A:「わかりました。現状のスケジュールや体制も含めて、最適化を考えたいので、今のお話をもう少し具体的に整理してもいいですか?」

B:「いえ、この件についてはお伝えしたとおりです。ご検討ください。私は、自分の担当範囲を確実に終えられる仕事をお願いしたいです。」

A:「…………そうですね。わかりました。少し時間をもらって、こちらでも考えてみます。」

解説

人は日々発達しています。

発達と老化は一見違う概念のように感じますが、発達するとは老化して死に近づいていることを意味しているとも言えます。

生まれ落ちたその日から死へと向かっているわけです

人は発達の途中で、全ての能力を発達させることはエネルギー消費が激しいので、価値観に沿って発達させる分野を選択していきます。

文章を書くことを発達させて、小説家になる。歌唱力を発達させて歌手になると伝えると理解しやすいのではないでしょうか

一方日本では、企業の中でオールラウンダーが求められます。営業から経理へ、そして他の部署へと部署を転々とする経験は決して珍しいことではありません。

興味や関心の高い人材なら、どの部署でも器用にこなすことができるかもしれませんが、ゆっくり仕事を覚えるタイプの人もいますし、適正もあります

発達のスピードと経験年数や適正のミスマッチが起こると、当然仕事でミスが増えたり、処理が追いつかなくなります。結果、自己有用感は下がり、がんばることが虚しくなります。

がんばることが虚しくなると、人は、自己防衛本能が強くなりチャレンジを避けるようになります。そこに老化も加わると意欲、興味関心も低下していきます。

老化と聞くと悪いイメージがあるかもしれませんが、エネルギーのピークは20代ですと伝えられるとその通りだと感じるのではありませんか

30代はエネルギーの使い方を知るターニングポイントです

30代でがんばることが虚しくなると人はどんな思考をするのか?

自分を守るために、自分に言い聞かせます。

仕事だけが人生ではない

自分の限界を超えている

もう十分頑張ったじゃないか

この暗示は強力です、下り坂の方が短時間で勢いがつきます

そうなると、人はどんな発達をするのか

言い訳を反射的に考えることができるようになります

人や環境の悪い点を指摘する力は誰よりも上手になります

これも発達です

今回の会話例は、自分を守るために発達した結果の話です

このような課題は、社会の中でよく見られるのではないでしょうか

私はそうなる前に気づいて、道を修正してあげられれば良かったのになと感じています

タイミングをつかんでフォローを入れることが重要

ただ、これは、プレイヤーから管理職になった人が気づくことは難しいので専門職、心理職の力を借りるのが良いのではと常々思っています

企業文化に心理職の視点を導入して、早めのケアでお互いが助け合う企業文化を築くことができるとみんながハッピーになれるのでは?

日本は労働者の権利が強く、雇用する側に不利であると言われますが、私は日本らしくて良いことだととらえています

みんなで意見しあって対話して、より良い状況を作るって素晴らしいことだと思いませんか?

ただ、その仕組みを生かすシステムが確立されていないのが課題ではないでしょうか

企業がご縁で集まった社員同士が対話して、生き生きと経済活動を実施し、世の中の暮らしをよくする

そんな未来を作るために、できることがないかを考えていきたいです

もし、あなたが辛い立場にあるのなら

人は何度でもやり直せます

過去に囚われず今に生きることができるように応援しています

一緒に今を生きていきましょう