不変の自分はありえない

A: 俺たち、もう入社して7年目か。3年目くらいまでは自分でも「成長してるな」って実感があったんだけど、最近なんか停滞気味なんだよね。

B: 同期の中じゃお前が一番出世してるんだから、そんなこと言うなよ(笑)。

A: いや、たまたま企画のポジションにいただけだよ。正直、中身はあんまり変わってない気がする。

B: まぁ、言われてみれば俺も最近「成長した!」って感じる瞬間、減ったかもなぁ。

A: 昔は「スキル身につけなきゃ!」って必死で研修受けたり、上司に相談したりしてたじゃん? でも今は後輩も増えてきて、なんとなく「できてる風」を装っちゃってる気がするんだよな…。

B: ああ、それはあるわ。「わかりません」って言いづらくなってるよな、このキャリアになると、なおさらな。

A: 新人の頃、上司に「聞けるのは3年目までだぞ」って言われたの思い出したよ。その呪いのおかげで、当たり前のことすら聞けなくなって自分の首絞めてる感じがする。

B: ほんとそれ。俺なんて未だにわかんないこと山ほどあるから、こっそり同期に聞いて調べてるもん。持つべきものは同期だよな。

解説

なぜ、入社7年目は「あっという間」に過ぎるのか?

人は新しい環境に放り込まれると、必死でその場に適応しようとします。 入社したての新人が、ものすごいスピードで仕事を覚えたり、人間関係を構築したりするのはそのためです。私たちの脳は、生存本能としてアクセルを全開にし、「この環境で生き残る」ためにフル回転で働き続けます。

しかし、環境に慣れてくると状況は一変します。 脳は「省エネモード」へと切り替わるのです。

今回のAさんとBさんの会話を思い出してください。入社7年目ともなれば、会社の組織図は頭に入り、仕事のやり方はパターン化され、「誰が要注意人物で、誰が頼れる味方か」も完全に把握できています。 こうなると、脳はもうフル回転して周囲を警戒する必要がありません。

その結果、何が起きるか。 毎日が「自動運転」のようになり、1年があっという間に過ぎ去るようになります。

同じルーティンの繰り返しでは、脳に「新しい刺激」という記憶のフックがかかりません。よほどのドラマがない限り、「なんとなく過ぎた平凡な毎日」として処理されてしまうのです。これが、大人が感じる「停滞感」の正体です。

「変わらない自分」は存在しない。あるのは「成長」か「老化」だけ

ここで、残酷ですが大切な真実をお伝えします。 多くの人は「今のまま変わらずにいられたら安心だ」と考えがちですが、「不変の自分」など、この世にはあり得ません。

人間、いえ、生物はすべて「成長」か「老化(退化)」のどちらかのプロセスの中にいます。「現状維持」というボタンは存在しないのです。

脳は放っておくと楽をしようとする(省エネモードに入る)臓器ですから、何も考えずに漫然と過ごせば、それは「安定」ではなく、緩やかな「老化」への道を歩んでいることになります。

その「違和感」は、脳からのSOSでありチャンス

だからこそ、Aさんが感じた「最近停滞気味だな」「できてる風を装っているだけかも」という違和感は、実はとても価値のあるものです。

それは、あなたの本能が「このままじゃ老化しちゃうよ!」「もっと新しい景色を見たいよ!」とアラートを鳴らしてくれている証拠だからです。この違和感に気づけたこと自体が、最大のチャンスなのです。

もし、あなたが「毎日がマンネリ化している」「最近ワクワクしていない」と感じるなら、ぜひ自分自身にこう問い直してみてください。

「不変の自分などあり得ない。だとしたら、私はこれからどちらへ進みたいのか?」

そして、もし周りに同じような停滞を感じている人がいたら、愚痴を言い合う代わりに、こんな本質的な問いを投げかけてみてください。

「本当は、どんな状態が一番最高だと思ってる?」

「制限がないとしたら、どんな経験をしてみたい?」

「仕事を通じて、誰を喜ばせられたら幸せ?」

この問いかけが、固まった「思い込み」を溶かし、再び脳のアクセルを踏むきっかけになるはずです。 あなたの人生が、自動運転の繰り返しではなく、心も体も満たされる「成長」の旅になることを願っています。