価値観

F
今回のテーマは、『価値観』について対話していきます。私は感性と思考を自由に広げることを最も大切に生きています。これは豊かな自然に受け止めてもらえる環境の中、人とふれあいながら過ごしたこども時代が原点だと思っています。Mさんにとって価値観についてどのように感じているかを自由にお話しいただきたいです。

M
私は子供の頃から、言語化できない「何か嫌だ」と感じる瞬間がありました。今思えば、それが私の価値観を測るセンサーだったのだと思います。好きなことや楽しいことは、すぐに行動に結びつきやすいため、価値観と混同しがちです。しかし、本当に大切なのは、心の奥底で感じる「嫌な感じ」であり、それこそが価値観の根本にあると今は考えています。Fさんの価値観の原点を言語化するとどのようになりますか?


F
Mさんは度々違和感の大切さをお話されていますよね。私はそのようなセンサーは、本来すべての人がもっているという考えです。蓋をして見ないように気づかないふりをして生きるか、自己と対峙するかのちがいというような気がします。
私の場合は、環境変化が繰り返される人生でしたので、ある社会集団からすると常に新しい存在で異質だったんですね。大きな流れにのりながらも、どのような状況にあっても自分らしくということに価値を置いていたように思います。人間関係を含む外側の社会環境は流動的で予測もコントロールも不可能なものと体験していたので、判断軸をいつも自分という内側に置いていたんですね。そして社会環境と対比して不変の存在であるのが自然なんです。自然を感じて心を見つめることが原点なのだと思います。

M
「違和感センサー」は誰もが持っているはずですが、現代に生きる私たちは、それを言語化するのが難しくなっているように感じます。常識という波にのまれ、無意識に心の声に『蓋』をしてしまっているのかもしれませんね。
Fさんの「社会環境と自然環境」という視点は非常に鋭いと感じました。今の社会環境はあまりに不自然ですし、AI時代になってその傾向は加速しています。 その不自然な環境に適応しようと情報のシャワーを浴び続けることで、結果として「自分の価値観」を見失う人が量産されていく気がしてなりません。
Fさんは、自然に触れたり、あえて情報を遮断して内面と対話されていますが、それは意識的に(戦略的に)行っていることなのでしょうか? それとも自然な振る舞いなのでしょうか?


F
社会が不自然ですよね。予測不可能で変化のスピードが早い時代で、不安を市場とする産業が盛んなことも社会の不自然さに拍車をかけてしまっていると思います。そもそも人間の中だけでエネルギーを回していくことは自然の摂理に反する事なのに、それを目指してしまった悲しい結論なのではないでしょうか。だから今気づいて取り戻そうという変革もありますよね。自然に触れて内面と対話し身体のリズムを取り戻すことも、デジタル機器や情報を不要な時には遮断することも自然な振る舞いの延長です。自分の価値観を守り続けるためなのかもしれないですね。


M
少し視点を変えて、Fさんは鋭い直感を持っているように感じています。また言語化できなくても感性、五感で理解している場合もあり、価値観を語る上でとても興味深いのですが、感性と思考を自由に広げることと現在の社会の障壁について教えて欲しいです。また、ご自身だけでなく同僚など近くで接する方で、価値観を確立することが困難になっているなと感じる具体的なエピソードがあれば教えてください。


F
社会環境が求めてくることと、のびのびと自分らしく生きていくことが一致しないということは、不自由で不自然です。社会や組織の適応を無理して頑張ると、例えば周りからの評価はぐんと上がるしお給料も安定していくし、でもなんだか面白くないし息苦しいっていう気づきからですね。
社会の価値観を支えに尽くしてこられた方々は不安そうに見えます。なので常々、“あなたがいてくれるだけでいいんですよ”と私はよく言います。自分が大事にしている価値観を磨きながら役に立つことをやれば、それで社会は循環していくはずなのに、自分の力を信じられなくなって忘れてしまった方も多いのではないですか。自分が大事にしていることを、社会が知っているはずないですよ。
私にとっての社会の障壁は、人間がすべてを知っていてなんでもできるような勘違い構造ができてしまったことだと思います。自分にばっかり意識が向いていると病んでしまうのと同じです。なので定期的に自然に身を委ねて意識を外して、わからないこともできないこともあっていいし、そもそも自分なんてちっぽけな存在なんだと認識することが大事という考えです。そうすると不思議と、力が湧いてきませんか。


M
Fさんの話を聞いて、ギリシャの哲学「外の世界を支配しようとする手を止めなさい。まずは『無知の知(自分が何も知らないことを知る)』を持ち、自分自身の魂を理性の力で統制することから始めなさい。」の言葉が浮かびました。今こそ、自分が何も知らないことを知るって大切な真理だと感じました。今回のダイアローグは価値観が見つからないと思っている人のヒントになったのではないでしょうか。慌てず、じっくり自分自身と対話してみてくださいね。