自由への嫉妬

Aさん:ちょっと聞いてよ。最近、会社を辞めてフリーランスになった大学時代の友達がいるんだけど…。

Bさん:へぇーすごい勇気あるね

Aさん:さっきSNSのストーリー見たら、「今日は平日だけど、天気いいから海に来てまーす! PC一台あればどこでも仕事できる幸せ♡」とかアップしてて。
なんかそれ見たら、心がザワザワするというか…正直、めっちゃイラッとしちゃったんだよね。

Bさん:ちょっとわかる。ただ、そのイラッとした気持ち、もう少し言葉にできる?

Aさん:うーん、なんて言うか…。「仕事なめんなよ」って(苦笑)。
私たちが満員電車に揺られて、会社で嫌な上司に頭下げて頑張ってる時に、海で優雅にPC広げて仕事? それって遊びじゃん、みたいな。真面目に働いてる自分がバカみたいに思えてきて、腹が立つんだよね。

Bさん:「真面目に働いてる自分がバカみたい」か。そこが重要かもね。
ちょっと意地悪な質問をすると、もしAが今の会社の仕事も、通勤時間も、人間関係も「大好きでたまらない!」状態だったら、彼女の投稿を見てイラっとする?

Aさん:えっ? うーん…もし今の仕事が最高に楽しいなら、「へー、あの子はそういうスタイルなんだ。私はオフィスが好きだけどね」ってスルーするかも。

Bさん:だよね。どうでもいいことには、感情は動かないからね。
つまり、その怒りの正体は、友達に対するものじゃないんだと思うよ。私にもよくあるから。
「私はこんなに我慢して『社会人の常識』を守っているのに、あの子だけその我慢をしていないズルい!」という、自分自身の我慢に対する怒りなんじゃない。

Aさん:ズルい…か。たしかに「いいなぁ」より先に「ズルい!」って思った。
でも、社会人なら多少の我慢は当たり前じゃない? 嫌なことも耐えて給料もらうのが仕事じゃない?

Bさん:私もすぐその思考になるから、気持ちわかる! その「苦労=美徳」「我慢=給料」という強力な思い込みがあるから、そこから外れている彼女を見ると、自分の価値観を否定されたような気がして攻撃したくなるんだよね。変なコメントしている人ってみんなそうなんじゃないかな?
でもA、本音のところはどうなの? その「当たり前の我慢」、一生続ける?

Aさん:……絶対に嫌な感じがしてきた。
本当は、満員電車なんて死ぬほど嫌だし、天気のいい日は外に出たいし、無意味な会議に出るより一人で集中して仕事したいなぁ。

Bさん:それがAの「本当の願望」だよ。
嫉妬や怒りが湧くのは、羅針盤が「そっち(自由な働き方)に行きたい!」と激しく針を振っている証拠かもね。きっと、彼女はAの「抑圧していた本音」を目の前で見せてくれただけなんだよ。

Aさん:うわぁ…図星すぎて痛い。私、本当は彼女のことが嫌いなんじゃなくて、彼女が持っている「自由」が喉から手が出るほど欲しかったんだね。
それを認めたくなくて、「仕事なめんな」って正義感を振りかざして蓋をしてたんだ…。

Bさん:まぁ、みんなそんなもんだと思うよ。変化するのも勇気が必要だからね。私もわかっているけど、なかなか変えられないよ。
だから最近私はイライラする代わりに、嫉妬を「サンプル」として観察してるの。 「どうやってその生活を実現したの?」って。

Aさん:サンプルか。

Bさん:そう。彼女はAの未来のシミュレーションをしてくれているって考えてみるの。
「悔しい!」というエネルギーを、「じゃあ私も、今の会社にいながらリモートワークできる部署に異動願いを出してみようかな」とか「副業でスキル磨いてみようかな」という行動に変えられると良いよね。

Aさん:なるほど…。そう考えると、彼女の投稿を見る目が変わりそう。「自慢しやがって」じゃなくて「どうやったのか盗んでやる」って(笑)。

Bさん:その意気だよ(笑)。嫉妬する相手は、未来の可能性を見せてくれている「トップランナー」だからね。羅針盤に従って、少しずつ舵を切っていけるようにしたいな。

Aさん:なんか、すっきりした。ありがとう。

解説

「同じものを見ているはずなのに、解釈が違う」。そんな経験はありませんか?

今回は、SNSでキラキラした投稿をする友人を見て「怒り」を感じてしまったAさんと、その話を聞くBさんのエピソードでした。

この二人、とても感覚が似ている気がします。素敵なお友達ですよね。

きっと二人とも、社会の中でグッと我慢して、努力を重ねてきた頑張り屋さんなのでしょう。
でも、だからこそ心の中にある「なんとなくのモヤモヤ」が、ふとした瞬間に「怒り」に変わってしまう。
SNSで厳しいコメントを書く人たちも、もしかしたら同じように、行き場のないモヤモヤを怒りのエネルギーに変えているのかもしれません。

そんな中で、BさんがAさんにかけた言葉が素敵でした。 「もし今の自分に満足していたら、同じように感じたかな?」 この「仮定の質問」が入ることで、Aさんはハッと気づきました。「あ、私は今の環境に不満があるんだ」と。

「ズルい」「許せない」。そんな感情の正体を自分ひとりで突き止めるのは、なかなか難しいもの。誰かとの対話の中でこそ、ポロッと本音が出てきたりしますよね。

最終的にAさんは、友人を「敵」ではなく、自分の未来を見せてくれる「サンプル」だと捉え直しました。これって、明日からの景色が変わるすごい発見だと思いませんか?

私たちはよく「嫉妬しちゃダメだ」「人を羨むなんて醜い」と自分を責めてしまいがちです。でも、嫉妬するというのは、そこに「自分が本当に欲しいもの」がある証拠なんです。どうでもいい人には、嫉妬なんてしませんから。

だから、嫉妬心に蓋をするのではなく、「自分の本当の願いを知るためのデータ」として冷静に見てみる。 「あ、私はあれが欲しかったんだ」と認めるだけで、心がスッキリすることもあります。

物事の解釈は無限です。自分にとって一番心地よい解釈を選んでいいんです。

日々のイライラやモヤモヤには、実は人生のヒントがたくさん詰まっています。

明日からはその感情をセンサーにして、ご自身の本当の価値観を探ってみてはいかがでしょうか。

また、モヤモヤしている友人や家族がいたら一緒に考えてあげてくださいね。答えは出なくても大丈夫です。モヤモヤを言葉にすることから始めてみましょう。