会話形式悩み相談ロング

10代 学習の悩み ①

私は頭が悪いから


勉強が苦手だと思い込む桜さんとの会話

相談員「今日はお越しいただきありがとうございます。桜さん、今日はどんなことを相談したくていらっしゃったんですか?」
「勉強ができない。やっぱ私、頭悪いんだと思う。」
相談員「そう思ったのは、どんなときですか?」
「こないだテストがあったんだけど、全部30点以下だったの。塾も行かされたけど全然覚えられなくて…。今日もお母さんに“相談してこい”って言われて来ただけ。」
相談員「そうだったんですね。あまり気が進まなかったんですね。」
「うん。」

相談員「いくつか質問してもいいですか?」
「いいよ。」
相談員「5教科ありますけど、点数は別にして“好きだな”と思える教科を順位づけするとどうなりますか?」
「1番は社会。次が数学。3番目は理科。国語と英語はどっちも嫌い。」
相談員「社会が好きなのはなぜですか?」
「先生の話を聞いてれば少しわかるし、歴史の授業で名前とかちょっと覚えられたりするから。」
相談員「なるほど。数学を2番にしたのは?」
「図形の問題ならちょっとできるから。」

相談員「ちょっと紙と鉛筆を使ってみましょう。まずお名前と、担任の先生の名前を書いてもらえますか?」
「いいけど…字がめっちゃ汚いよ。」
相談員「全然気にしません。私は先生じゃありませんから。」

相談員「では、好きなことや苦手なこと、やってみたいことや行ってみたい場所を書いてみましょうか。」
「うん。」
相談員「ありがとうございます。ちなみに、黒板をノートに写すのはどうですか?」
「大っ嫌い。どこ書いてるかわかんなくなる。」
相談員「そうなんですね。じゃあ、ちょっと文章を音読してもらえますか?」
「いいけど、漢字は全然わかんないよ。」
相談員「じゃあ、わからないところは一緒に読みましょう。」
「わかった。『正一はこれからの将来について考えました。』」
相談員「ありがとう。じゃあ次は、覚える力を試してみましょう。言葉をいくつか言いますね。――トラ、たぬき、花瓶、蓮華、チャーハン。もう一度言います。トラ、たぬき、花瓶、蓮華、チャーハン。覚えて言えますか?」
「あぁ簡単。トラ、たぬき、花瓶、蓮華、チャーハン。」
相談員「素晴らしいですね。ありがとうございます。」

相談員「ところで、桜さんが今日ここに来て“こうなったら一番ハッピー”ってどんな状態ですか?」
「やっぱテストで点数取れたらいいけど…無理。私、頭悪いから。」
相談員「本当にそうでしょうか? もし頭が悪かったら、今みたいに言葉を覚えてすぐ言えたりしないと思いますよ。人の名前も覚えられてますよね?」
「まぁ、クラスの子や先生の名前は覚えてるけど…。」
相談員「ですよね。じゃあ“頭が悪い”というのは違うと思います。多分“やり方が合ってない”だけです。だから一緒に、桜さんに合った方法を探してみませんか?」
「…うん、わかった。」

相談員「ちなみに、近くに学校の小テストはありますか?」
「単語テストがあるよ。」
相談員「何問くらい出るんですか?」
「教科書の内容で、大体20問くらい。」
相談員「練習はしていますか?」
「うん、前の日にやればちょっと覚えてる。でもすぐ忘れる。」
相談員「そうなんですね。何点くらい取れそうですか?」
「半分くらいは行くと思う。出るの決まってるし。」
相談員「それなら“頭悪い”って言うのはやめた方がいいかもしれませんね。だってできてるじゃないですか。」
「…まぁね。」

相談員「ちなみに、先ほど覚えた5つの言葉言えますか。」
「トラ、たぬき、花瓶、蓮華、チャーハン。」

相談員「頭良いですね。私すぐ忘れちゃいますよ。」