意外と「見て見ぬふり」が組織を強くする

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「言ったことは守らせる」
「ミスは即座に指摘して正す」
「常に効率的な正解を教える」

リーダーとして、これらは一見「正しい姿」に見えます。
しかし、もしあなたがこれを完璧にこなしているにも関わらず、
「チームに活気がない」
「部下が指示待ちで動かない」
「新しいアイデアが出てこない」
そう感じているなら、それは危険信号かもしれません。

雑菌(ミスや無駄)が一切許されない清潔すぎる部屋で、生命力(主体性)は育つでしょうか?
今日は、武士道のバイブル『葉隠』の教えを借りて、強いチームを作るために不可欠な「汚れ」の重要性についてお話しします。

『葉隠』が説く組織論:「水清ければ魚棲まず」
『葉隠』には、人間関係や組織について、こんな言葉が記されています。
「水至って清ければ魚棲まず」

あまりに透き通った綺麗な水には、魚が隠れる場所も、餌となるプランクトンもありません。だから魚は寄り付かず、やがて死に絶えてしまいます。
これを現代の組織に置き換えると、どうなるでしょうか。

清すぎる水 = 正論、ルール、完璧主義
魚 = 部下の才能、主体性、やる気

リーダーであるあなたが「正しさ」という高性能なフィルターで水をろ過しすぎると、部下は「間違ってはいけない」「指摘されてはいけない」という不安で窒息します。
その結果、減点されないこと(生き延びること)だけを目的に動く、「死んだ組織」が出来上がってしまうのです。

では、リーダーはどうすればいいのでしょうか。
ミスを見ても見逃せと言うのでしょうか?

ここで重要になるのが、「タガタメ(誰がために)」という視点です。

部下のミスや非効率なやり方に気づいた瞬間、あなたの喉元まで「指摘」が出かかるでしょう。
その時、言葉を発する前に、一度だけ自分に問いかけてみてください。

「今、言おうとしているその正論は、一体『誰がために(タガタメ)』言うのか?」

正直に自分の心を見てみましょう。
「早く直させないと、後でトラブルになって私が困るから」
「なんでこんなことも分からないんだ、と言って私のイライラを鎮めたいから」

もし動機がこれなら、それは「指導」ではありません。
あなたの不安や不満を解消するための、「自分への鎮痛剤」です。部下を支配しようとしているに過ぎません。

本当の「タガタメ(相手のため)」とは何でしょうか。
それは、答えを教えることだけではありません。

「失敗する権利を奪わない」こと

このまま進めば転ぶかもしれない。失敗して痛い目を見るかもしれない。
それが分かっていても、致命傷にならない限りは、あえて手を出さずに見守る。
そして、部下が自分で違和感に気づき、悩み、修正しようとするプロセスを待つ。
子育てについても共通する部分があるかもしれませんね。

この「待つ苦しみ」を引き受けることこそが、リーダーの本当の愛情であり、タガタメの精神です。

「濁り」が心理的安全性を作る

Googleの研究で有名になった「心理的安全性」という言葉があります。
これは「何を言っても怒られないぬるま湯」のことではありません。
「失敗しても、このチームは見捨てない」という信頼がある状態のことです。

組織に必要な「濁り(プランクトン)」とは、
「ちょっとした無駄話」
「突拍子もない意見」
「小さな失敗と、それを許す空気」
のことです。

リーダーが「自分の安心」よりも「部下の経験」を優先してくれている(タガタメがある)と感じた時、部下はその適度に濁った水の中で、安心して本来の力を発揮し始めます。

部下の未熟さを目の前にして、口を出さずにいるのは、泥水を飲むように苦い経験です。
正解を言ってしまった方が、どれだけ楽か分かりません。

しかし、その「泥水を飲み込む我慢」こそが、リーダーの器の大きさです。

つい口を出したくなったら、心の中で唱えてください。
「タガタメ?(これは誰のため?)」と。

自分の安心のためなら、グッと飲み込みましょう。
相手の成長のためなら、信じて見守りましょう。

その「利己」と「利他」を見極める静かな葛藤の先に、想像もしなかった成果が育つ瞬間が、必ず訪れます。

「タガタメ?(これは誰のため?)」は人々全ての生活の中で問い続ける考え方ですので言葉を発する前に、これは誰のための言葉?を意識できるように日々意識していきたいですね。