FとMのダイアローグ17
M
今回のテーマは、『休息』について対話していきます。
Fさんは意図的に休息を取ることはあるのでしょうか?私にはあまりない概念です。また、休息を取ることで一番に何を整えているのかなど自由にお話しいただきたいです。
F
生活や仕事の中で休息を入れることはとても大切にしています。先に休息を計画してから予定を組んでいるくらいです。
第一子を出産後に職場復帰したときに尊敬する先輩が、“私は無理をしたらいけるって思うときは、休むようにしているよ”と助言をくださったのです。あれもこれもと頑張りすぎている姿をみて、あたたかい言葉を下さったのではないかと思っています。
それ以来、休んで息を抜くことも大事に過ごすようにしています。
M
なるほど、職場の同僚にも進めてみたいお話しですね。少し深掘りしたいのでいくつか質問させてください。
自分の体調やバイオリズムで日々変化しているので自分の限界を感覚としてつかむのは難しいなと思う時があるのですが、休息の計画とは具体的にどのように考えるのか教えて欲しいです。また、休息時間の使い方はどのように過ごしているのか、場所や行動などおすすめはありますか。
F
同僚や後輩が疲れているようなときは、同じ言葉をかけるようにしています。休む勇気ですね。
少し重いなとか集中が上がっていかないなと感じた時に微調整で休みを入れています。一番良い状態の心身状態や行動を基準値として、覚えておくとよろしいのかなと考えますがいかがでしょう。
休息の計画は、毎月家族全員の動静と予定→仕事予定を記入した後に、自分の休息を計画しておきます。何も予定せず、過ごし方も決めておかないというスタイルです。休日である喜びを楽しみます。
例えるなら、子ども時代の夏休みですね。夏休みの毎日すべてに遊ぶ計画がある子はあまりいないだろうと思います。それでも予定がない日も含めて、ただ“夏休み!”っていうだけで、湧き上がる喜びで満ち溢れていますよね。そのような心境です。
特別なことも贅沢もしていないんですが、ひそかに気分があがっています。
M
なるほど、余白の時間設定ですね。それなら、私も故意的に入れることがあります。普段は、仕事でパフォーマンスを発揮したいから仕事中心に時間を組み立てていますが、休日の余白は大事にしています。余白があると、今日は時間あるし天気も良いから近くの山を登ってみようと気分が上がります。休息って言葉だけ考えると、横になって休むイメージがあったので、良くあるパワーナップのようなお昼寝とかおやつタイムなどかと思っていました。
休む勇気って大切ですよね。私は職場の同僚が体調悪そうだと、お互い様だから休んで欲しいと伝えています。日本人って真面目な方が多いから無理しすぎな面がありますよね。
F
似たような概念に休憩がありますが、休憩は、仕事など活動の合間に一時的に止まることです。対して休息は、心や体を休めて、エネルギーを回復させることです。横になって眠ることも、おいしいものを味わって食べることもいいと思いますし、Mさんのように山登りなど自然に触れることも休息になりますね。体と心、そして頭の張りがほどけ、安心して息が抜けることが大切です。
真面目であることは素晴らしい長所ですが、無理をしてまでというのは心配ですよね。
最近いいなと思った例としては、朝一で職員同士が自分自身の体調を声にだして共有し合うことです。お互いのその日のコンディションをみんなが知っているので、その日疲れている人は業務の合間に声を掛け合って小休憩をオープンに取ることができます。個室休憩室を優先的に当ててもらえるというような配慮もあります。
パワーナップも企業導入するなら素敵だと思うのですが、わざわざ外出してということには疑問です。組織の中に休息の文化と環境を作ることが本質的に重要だと考えています。
照明や音の刺激が少なく、足を投げ出して横になれるスペースは短時間でも回復感が高く、仕事効率や集中力向上にも繋がります。疲労や苛立ちのストレスによるトラブルや、注意が逸れることでのミスの予防にもよいでしょう。休憩ではなく休息を、職場内でとれると理想だと感じます。
M
「休憩」と「休息」の違い、そして組織としての文化づくりの大切さ、非常に共感します。自分が上手に休息を取れていないので同僚へのアドバイスが難しいです。そのうえで、最近の「エビデンス重視」の風潮について少し思うところがあり、Fさんに聞いてみたいと思います。
最近はよく「15分のパワーナップがパフォーマンスを上げる」といった科学的根拠が語られますが、私はこれも一つの「疑うべき指標」ではないかと感じています。というのも、こうしたデータはあくまで平均値であり、すべての人にそのまま適応されるわけではないと思うからです。以前Fさんともお話しした通り、人間には明らかな個人差があり、バイオリズムやパフォーマンスは日々刻々と変化しています。「以前はできたことが今日は難しい」「逆にできなかったことが今はスムーズにできる」といった流動性の中に私たちは生きています。ですから、休息の取り方についても「これが正解」と固定せず、その時々の自分に合わせて「いろいろと試してみる(実験してみる)」姿勢こそが大事なのではないでしょうか。
ただ、ここで人生の難しさを感じるのは、何かが「習慣」になってしまうと、今度は人間が持つ「変化を嫌う性質」が顔を出し、今の自分に合わなくなった方法に固執してしまう危うさがある点です。休息の話から少し飛躍してしまったかもしれませんが、Fさんはこの「エビデンスの一般化」と「個人の流動性・変化への抵抗」について、どう思われますか?
F
エビデンスは重要ですが、個人差も丁寧に理解して実体験を大切にしていくということがよいように思います。そもそもインターネット上には、科学的知見といっていいものか疑問になる情報も多数混在しています。真の情報があっても、偽がわかる人にしか直ではたどり着けないくらい情報が量産されすぎてしまっていますよね。
私ははじめにテレビや動画から情報を得ることはまずなく、日常生活の情報源は複数社のネット版新聞記事と時事通信社です。健康情報は、先に発信者の資格と所属を確認してから読むか読まないかを判断します。
認知発達の視点で見ると、新しいことを柔軟に解決する能力は若年期がピークです。その後は徐々に低下していきます。習慣を変えるというのは、つまり新しい状況や環境への適応が求められると思うので難しいと感じることが増えるのも自然ですね。ただ、経験や学習によって蓄積された知識やスキルは年齢を重ねる中で伸びていき、高齢になっても低下しにくい能力です。なので、過去の経験知やスキルを活かし、自分の中での繋がりを大事にしながら新しい方法に段階的にチャレンジしてみるといったような流れだと抵抗感が少ないかもしれないと思いました。
M
休息がテーマでしたが着地点は「柔軟な習慣の更新」となりましたね。年齢と共に新しい適応(流動性知能)が難しくなるという生物学的な特性を理解した上で、これまでに蓄積した経験(結晶性知能)をどう活かすかは知識として蓄えておきたいと感じました。
「習慣を変える」ことを敵視せず、過去の成功体験や知識をフックにして、新しい休息法を「自分を使った実験」として段階的に取り入れていく。情報の波に呑まれず、信頼できるソースを選別しながら、今の自分に最適な「休息の形」を探し続ける姿勢が大切ですね。
読者の皆様も、自分なりの休息の形を考えていただき、より良く生きる毎日を過ごして欲しいと思います。
ダイアローグとは、単なる情報交換を超え、参加者同士が相手の意見や考えを深く理解し、共感を深めながら、新たな視点や行動の変化を生み出す「対話」を意味します。
組織では、相手と自分との間に「相互理解」と「共通の理解」を築くためのコミュニケーション手法として用いられ、信頼関係の構築や創造性の育成、組織力の向上に繋がります。
組織をマネジメントする立場にある人にとっては欠かせないスキルです。ただ、センスで乗り切っている人が多いと感じる印象もあるので、具体的な対話で学べるように表現してあります。
