境界線

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今回のテーマは、『境界線』について対話していきます。抽象的な概念なので、まずはこの言葉から連想されることを自由に述べていきたいですね。私は境界線という言葉から「私と他者の関係性から考える境界線」が真っ先に思い浮かびますが、Fさんはどうでしょうか。

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私もまずは、人間関係の境界線ということを思いつきます。ここ数年よく耳にするバウンダリーという概念です。「私は私、あなたはあなた」という目には見えない線引きですね。仕事では馴染み深い言葉で、境界が緩いとか弱いとか、境界線を超えてくるという意味で侵入的だとかいった用い方をすることがあります。

体やお金など物理的なもの、責任範囲や感情、社会や規則など様々な文脈で用いられるのですが、そもそもの境界線の持ち方は個人によって差異が大きいように感じています。前提が異なるというかそのような理解でいます。Mさんはいかがですか。

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私も「境界線」という言葉は、個人差が大きく一概に定義するのが難しいものだと捉えています。人間関係に絞って言えば、相手との関係性によってそのラインは常に変化しますよね。例えば、「家族には話すけれど、友人には話さない」といったように。

また、境界線の引き方にはその人なりの「目的」や「価値観」が反映されているため、互いの価値観が違えば、意図せず他者の境界線に踏み込んでしまうことも当然あるかと思います。

最近、人間関係の希薄さがよく話題に上りますが、世の中が便利になった反面、他者との摩擦を通じて「境界線を探り合う」という経験そのものが減っているからかもしれませんね。

Fさんはまさに「境界線を探るプロ」ですよね。普段の会話や態度から、どのように相手の境界線を見極めているのでしょうか? 一般の人にも日常で活かせるようなスキルや視点があれば、ぜひ教えてください。

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気持ちとしては、素人です(笑)日常をふりかえると、先に自分からの関りがあって、その次に境界線を作るという順番があるように思います。

“自分から”ということがポイントで、これが逆で相手から始まる関りが多すぎると境界を作ることに時間がかかってしまうような気がします。“自分から挨拶をする”、“自分から話題をふる”ことで、相手の反応をみることができます。そこで例えば、元気すぎて引いていると思えば、声量や動きを抑えて対人距離をとって関わるように気をつけます。意外と嬉しそうでたくさん話してくれるなと思ったら、いろいろな質問を投げかけて話量を増やしていきます。そうやって相手と自分にちょうどよい境界線を作っていきます。

できれば関わりたくないという状況もあるかと思います。そのようなときは、最低限の応答や関りにしてもいいですね。愚痴や不満、怒りや嘆きを常に周りに吐き出し続ける人は、境界線が弱いと理解します。これは、相手の問題であって自分で引き受けることではないのです。

けれども困ったことに、そのような方は周りを巻き込むのが上手であるような気もするんですよね(笑)ある部分では優しさが深いので、周りも混乱して落ち着かなくなるので大変です。ただやっぱり、“相手の問題”と意識して線を引くことは大切です。

M

確かに、境界線を引く起点は「自分自身」にありますね。自ら働きかけ、相手の反応を見ながら調整していく。自分にとって心地よい境界線を見定める作業は、身体感覚で言えば「格闘技における間合い」に近いかもしれません。

逆に、境界線が曖昧で弱い人ほど、自他の領域が混ざり合ってしまうためか、怒りや嫉妬、愚痴が多くなる傾向があります。そうした境界線の弱い人が、まるで「台風」のように周囲を巻き込んで場を荒らしてしまうのは、よく見る光景です。

まともにぶつかって消耗しないためにも、私たちにはその台風をスッと「かわす準備」も必要なのだと思います。

今まで人間関係の境界線の話をしましたが、これを『物理的な空間』と『自分の思考』の境界線に置き換えるとどうなるか気になっています。

例えば、机の上に意図的にモノを置かないことで、思考が散らかるのを防ぎ、自分自身の集中する領域(境界線)を守ることができますよね。これは私がとても大切にしていることなのですが、Fさんは自分の内面を整えるために、物理的な環境との間にどのような境界線を引いていますか?

とても納得しています。物理的な境界としては、職場ではロッカーをプライベートと仕事の境界としています。缶の中にお菓子やインスタントを入れ、お気に入りのものや、やる気が出る思い出の品で飾ります。開くたびにほっと一息ついて立て直すための区切りになっています。テーマカラーを決めた年もあって、私にとっては小さな部屋ですね。

割り箸、裁縫セット、紙袋、市販薬などは多めに入れてあり、職場で急に必要になった方がいれば差し上げることもよくあります。非常時の持ち出し袋も作ってあります。

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職場のロッカーやデスクの引き出しに個性が表れるというのは、確かに盲点でした。物理的な空間を整えることは非常に大切であり、私の場合は思考が散らかってしまわないように、スッキリとした状態を保つのが向いているようです。

もちろんこれには個人差があるため一概には言えませんが、例えば「どの色なら集中できるか、気分が落ち着くか」といったように、誰もが自分の心地よい空間をカスタマイズできる環境こそが、職場としては理想的なのではないでしょうか。

電話の着信音一つをとっても、本当はそれぞれにとって不快に感じない「適した音」があるはずです。視力、聴力、嗅覚など、人の感覚は千差万別です。それなのに、全員を画一的な環境に無理やり合わせようとすること自体、実は理にかなっていないのかもしれませんね。

F

管理の視点からみると、画一的な環境に合わせる方が手間がないためそのような状況が多いのではないでしょうか。ただおっしゃるように、個人の感覚の多様性も脳科学領域で明らかになってきています。話し合いながら環境をカスタマイズできると理想ですよね。

場や空間を分けて境界線を引く、重なり合い共有するスペースを一緒に見てルールを確認する。そのようなプロセスをもつことも、「境界線を探り合う」大切な作業のように思います。

M

結局のところ、物理的な境界線と精神的な境界線は繋がっており、それらが螺旋状に組み合わさっているのだと思います。だからこそ、お互いの境界線を丁寧に探り合うプロセスが本当に大切なのではないかと感じました。 身近にいる人を大切にするという意味でも、日々お会いする方々と互いの境界線を楽しみながら構築していくのも良いかもしれません。 また、現在はさまざまなプロジェクトに関わらせていただいているため、今回の対話を通じて「仕事における境界線」というテーマも非常に興味深いものだと感じています。

F

本当にそうですよね。お互いの境界線を確かめ合いながら、構築する姿勢が大切ですね。物理的・精神的な境界線は組み合わさっているという視点も、「仕事における境界線」に役立つように感じました。今回は「境界線」をテーマに対話しました。皆さんの毎日に何か参考になることがありましたら幸いです。