ひと呼吸が、自分を取り戻すきっかけ
最近、「呼吸」について改めて考える機会がありました。
きっかけは、本を読んでいて知った「息を吐くことの大切さ」です。
私たちは深呼吸というと、大きく息を吸うことをイメージしがちですが、実は息を吐くことにも大切な役割があるようです。
呼吸と自律神経には深い関係があり、ゆっくりと自然に息を吐くことは、心身を落ち着かせるきっかけになるといわれています。
実際に、私も息を吐くことに意識を向けてみました。
すると、頭の中に浮かんでいた雑念が少し静かになり、肩の力が抜け呼吸そのものに集中できる感覚がありました。
ちょっとした瞑想をしているような感覚です。
もちろん、息を無理に長く吐いたり、強く吐き続けたりする必要はありません。自然で心地よい呼吸が基本です。
この経験から、改めて思ったことがあります。
私たちは、普段どれくらい「何も考えない時間」を持っているのでしょうか。
現代社会は、情報にあふれています。
朝起きればスマートフォンを確認し、通勤中にはニュースやSNSを見て、仕事中も次々と入ってくる情報に対応する。
少し時間ができれば、またスマートフォンを開いてしまう。
便利な社会になった一方で、頭の中を休ませる時間は、ずいぶん少なくなっているように感じます。
そもそも人間は、不安を感じやすい生き物です。
危険を予測し、失敗を避け、未来に備えることは、生きていくうえで必要な能力だったのでしょう。
ところが現代社会では、仕事や人間関係、将来のことなど、不安の対象はいくらでも見つかります。
さらにSNSを見れば、他人の生活や成功が目に入ってきます。
それまで特に気にしていなかったことでも、誰かと比較することで、新たな悩みが生まれてしまうこともあるのではないでしょうか。
もちろん、情報を得ること自体が悪いわけではありません。
ただ、何となく情報を取り込み続けることで、自分から不安の材料を増やしてしまっているとしたら、少しもったいない気がします。
身体は休んでいても、頭の中ではずっと何かを考えている。
そんな状態が続いているのであれば、意識的に「余白」をつくることが必要なのではないでしょうか。
そこで、私がおすすめしたいのが、日常生活の中で「ひと呼吸」を意識することです。
例えば、トイレに座ったとき。
ほんの少し目を閉じて、ゆっくり息を吐いてみる。
呼吸に意識を向けることで、さっきまで考えていた仕事や人間関係のことから、少し離れる時間をつくってみる。
雑念が浮かんできても構いません。
また呼吸に意識を戻せばいいのです。
大切なのは、不安を無理になくそうとすることではありません。
不安について考え続けている自分から、ほんの少し離れてみることです。
そして、呼吸で少し落ち着いたら、自分に一つだけ質問をしてみるのも良いと思います。
例えば、朝であれば、
「今朝、何か気持ちの良いことはあったかな?」
昼であれば、
「今日ここまでで、良かったことは何だろう?」
夜であれば、
「今日、感謝できることは何かあったかな?」
そんな小さな問いかけです。
答えは、特別なことでなくても構いません。
朝のコーヒーがおいしかった。天気が良かった。誰かが笑顔で挨拶してくれた。
私たちは不安や不満には敏感でも、今ある心地よさには、なかなか気づかないことがあります。
だからこそ、少しだけ意識を向ける方向を変えてみる。
もちろん、何も思い浮かばない日があっても良いと思います。
無理に前向きになる必要はありません。
大切なのは、自分の気持ちに気づく時間を持つことです。
ただし、こうした習慣を毎日続けようと思っても、忙しさの中で忘れてしまうことがあります。
そこで、もう一つ大切だと思うのが「物理的な仕掛け」です。
例えば、トイレのドアに小さな木の札を掛けておく。
トイレに座ると必ずその小さな木の札が見えるようにしておく。
そこに「まず、ひと呼吸」と書いておくのです。
トイレに入るたびに、その言葉が自然と目に入る。
すると、わざわざ思い出そうとしなくても、呼吸を意識するきっかけになります。
考えてみると、昔から日本の暮らしの中には、こうした仕掛けがあったように思います。
例えば、家の中にある神棚。
朝、神棚に手を合わせたり、水を替えたり、お供え物をしたりする。
もちろん、それぞれの信仰や家庭によって意味は違うと思いますが、そうした日々の行為が、感謝や祈りに意識を向ける時間にもなっていたのではないでしょうか。
目に見えるものが、目に見えない心の習慣を支えている。
そんな知恵は、現代の生活にも生かせる気がします。
そして、こうした習慣は、自分に合わせて工夫していくことが大切です。
トイレで呼吸を意識するのも良いでしょうし、歯磨きの後でも構いません。
朝、カーテンを開けたときに、窓の外を眺めながら深呼吸するのも気持ちが良さそうです。
呼吸に意識を向けることが合わなければ、静かにお茶を飲む時間でも良いと思います。
最初から自分に合った方法を見つける必要はありません。
まずは、何か一つ試してみる。
そして、実際にやってみて心地よければ続け、そうでなければ別の方法を探してみる。
そんな小さな行動の積み重ねが、自分にとって心地よい生活をつくるヒントになるのではないでしょうか。
人間は、放っておくと不安や心配事に意識が向いてしまうことがあります。
だからこそ、意識的に心地よさや感謝に目を向ける時間を持つ。
何かを新しく始めることだけが、人生を良くする行動ではありません。
時には、情報を取り込むことをやめて、ただ息を吐いてみる。
そんな「何もしない」という行動にも、大きな価値があるのだと思います。
今ゆっくり息を吐きながら、自分に問いかけてみてください。
「今日ここまでで、良かったことは何だろう?」
その小さな余白が、自分を取り戻すきっかけになるかもしれません。
忙しい毎日の中で、少しでも心地よい時間を増やしたいと考えている人のヒントになれば幸いです。

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